小さな小さな教理の窓No.17

「贖罪論③贖罪論の諸パターン」                     2023.7.16

 

 神の独り子主イエス・キリストの十字架が、主なる神さまと罪に落ちた人間の破れてしまった関係を繕い、和解させた贖罪の業であったというのが聖書の告げる福音(good news)の中心です。

 けれども、なぜ、キリストの十字架が、神と人とを隔てる罪を贖い、神と人との仲直りをもたらすことができるのかという説明については、聖書の証言と、教会の歴史の中で、多様な語り方がなされてきました。

 先ごろ出版された神学者の近藤勝彦先生の『キリスト教教義学』では、イエス・キリストの十字架の出来事がもたらす贖罪の意味を語ろうとする聖書の豊かな表象として、16ものイメージを挙げています。しかも、なお、それは「さしあたり」のものであり、キリストの贖罪の豊かさを味わい理解することは「探求途上の未決の開かれた教理」であると言います。

 つまり、贖罪論は教会の教えの中心でありながら、三位一体論や、キリスト両性論とは異なり、豊かな表現で理解することが許されているのです。その場合、教派によってどの説を強調しているかの違いはありますが、どれか一つを採用し、自分の立場を明確にすると言うよりも、色々な角度からキリストの十字架の意義深さを味わうために、どれも重んじられるものと受け止められているでしょう。

 次回以降、その多様な十字架理解の内、教会の歴史上に聖書から読み取られ、強調されてきた主要な贖罪理解のみご紹介します。今のところ、以下のモデルを一つづつ紹介していく予定です。

①犠牲の供え物としての十字架という祭儀のモチーフ(祭儀説)

②代償、償いとしての十字架という商法的、刑法的モチーフ(代償説)

③愛の模範としての十字架という道徳的モチーフ(道徳感化説)

④悪魔と死への勝利としての十字架という戦いのモチーフ(勝利説)

コメント

この記事へのコメントはありません。